インタビュー記事

どなたでも快適に・安心してご利用
いただけるような車両を。
「京成電鉄・日本車両・総合車両」
三位一体となって叶えました。

【京成電鉄株式会社】

鉄道本部 車両部 計画課 課長 吉原 祐一

【日本車輌製造株式会社】

鉄道車両本部 技術部 デザイングループ グループ長 田中 裕紀(たなか ひろき)

鉄道車両本部 技術部 車体グループ 副グループ長 大西 剛司(おおにし つよし)

【株式会社総合車両製作所】

技術本部 技術部(車体設計) 宮田 陽一(みやた よういち)

技術本部 技術部(ぎ装設計) 川上 清温(かわかみ きよはる)

多くの関係者の様々な想いを乗せた
「3100形」。
その製作に深く携わった方々に
お話を伺いました。

京成電鉄が要望したオーダーの中で特にこだわったポイント

吉原(京成電鉄株式会社):
 外装・内装共にいえることは、今までの京成のイメージを刷新できるような斬新なデザインを取り入れることにこだわりました。
 外装デザインの骨格には期間にして2年程度練りました。先頭部のデザインでは、運転士の視認性などを踏襲すると共に斬新さを持たせるために特に日本車両さんと打ち合わせを行ったのですが、もう何回したのかも覚えていないくらいです(笑)その節は大変お世話になりました。
 内装では快適性や清潔感を重視しました。この点は外装とは違い過去の車両の踏襲という考えではなく、最新式の設備を取り入れることを重視しました。

京成電鉄から受けたオーダーに対してどう応えたか。車両メーカーとしてこだわったポイント

田中(日本車輌製造株式会社):
 今回の車両は京成グループの“新”標準車両でもあることから、京成3100形のみならず、同時期に製作が予定される新京成80000形に対しても共通の造形とした上でそれぞれの配色・コーディネートを施して最適化を図ることが求められていました。例えば、外装デザインでは帯の配置や塗り分けが無理なく構成でき、両社のイメージに違和感なく馴染むものとなるように細心の注意を払って検討を進めています。
 先頭部のデザインは文字通り車両の“顔”として、京成さんからの「斬新なイメージ」とのご要望にお応えするために注力しました。日本車両は前回の3000形でも外装デザインを担当していますが、今回の3100形ではその出来栄えを上回る完成度の高いイメージを作り上げることを最重点課題として取り組みました。

宮田(株式会社総合車両製作所):
 やはり京成グループの標準車両と言う点ですね。一般の方には色の違いくらいにしか見えないかもしれませんが、京成3100形と新京成80000形で走行する路線が違うため、個々の仕様が異なっています。3000形の良い部分を可能な限り継承し、ブラッシュアップすることで、次世代の『京成グループ標準車両』にステップアップするように各社でアイディアを出し合い実現しました。

お客様の快適性・利便性向上のために追求したことは何か。

吉原(京成電鉄株式会社):
 外装では側面の行先表示器を2倍程度に大きくすることで視認性を高めると共に、常に日本語のほかに3か国語のいずれかが表示される仕様にしました。多言語案内をすることで訪日外国人のお客様が快適に旅行を楽しめれば幸いです。
 内装では以前より寄せられていたお客様からの要望を参考に、最新の設備を取り入れました。外装は特に気にされないお客様も多いかもしれませんが、実際に過ごすことになる車内は快適に越したことはないですからね。
 具体的には、お客様が腰かける座席(フリースペースを含めて)は座り心地を重視した形状としたり、手すりの形状を見直すと共に指紋が付きづらい加工を施しました。それらは何度も日本車両さん・総合車両さんと協議をしたり試作品を作ったりして試行錯誤しました。空調は暖房の能力を上げたり、車内の温度をより細かく調整できる制御を導入しました。それも日本車両さん・総合車両さんと試作品を製作して試験を重ねました。他にはUVカット率の高い窓ガラスを採用したり、荷だなをポールからスリット式に変えたりと同業他社さんに追い付き追い越すことを考えました。

大西(日本車輌製造株式会社):
 新機軸の一つとして京成さん・新京成さんの車両に初めて導入されるハイバックシートは、現車を用いたテストや試作品によって座り心地を検証し、採用に至っています。これまでの車両と比べ、より明るく開放感のある内装イメージとも相まって、乗車されたお客様が移動される時間を快適に過ごしていただけるものになったと実感しています。また、ロングシート中央部の座席が跳ね上がり、スーツケース置場としても利用できる構造は、国内の通勤車両では他に例を見ない構成・設備であり、空港アクセス用車両の新たなサービスとして利用者の方々にご評価いただけることを期待しています。

川上(株式会社総合車両製作所):
 内装ではフリースペースに設けた腰当付きの2段手すりが力を入れたところです。何度も試作してクッション性を高めるなどして快適性を高め、多くの方に納得いただける形状に仕上がりました。
 ぎ装設計としては床下機器配置を工夫しました。普段ホームに隠れてしまう床下の機器部品ですが、電車が走るためにはなくてはならない重要な部品です。実は、最適な機器配置は乗り心地や安全性能にも影響を与えます。機器部品によっては配置条件が異なりますし、日々のメンテナンス作業なども考慮しています。作業の制約条件が生まれてしまうため、よく比べると車両メーカ間で小さな違いがあったりします。多くの課題も4社で協力したことで越えることができ、この車両が設計されました。

是非ここをみてほしい!というポイントはどこか。

吉原(京成電鉄株式会社):
 たくさんあるのですが、あえて言えば外装では側面に描かれた沿線のイメージイラストですね。千葉や日本に来た・帰ってきたことを実感できるようなイラストとして実は初期案は15種類程度もありまして、その中から選定することはなかなか大変でした。
 内装もすでに今までの流れでポイントを話してしまったのですが、是非見つけて頂きたいのが隠れ京成パンダですね。実は車内のどこかに京成パンダが登場しておりますので、是非乗車された際には探してみてください!

田中(日本車輌製造株式会社):
 先頭デザインは、京成3100形・新京成80000形ともに新時代を走る両社の代表車両となるに相応しいイメージに仕上がった自信作です。他社では類似のイメージが見られないオリジナリティのある標識灯(急行灯)・尾灯のレイアウト、前面下部のスカート形状なども新しい先頭イメージを構成する要素として造形に拘ったものであり、内装においても各所に新規意匠を採り入れたデザインとなっていますので、空港輸送として利用される方々・沿線の方々にも是非とも堪能していただき、永く親しまれる存在になればと思っています。
 また、腰掛脇の袖仕切りを大型化しています。閉塞感を感じないよう大きなガラスとしましたが、設計時には仕様の議論を何度も繰り返しました。透明にするか不透明にするかや中間膜に模様を印刷するなどの議論を経て、プライバシーを守りつつ他人の存在を感じられるように半透明のガラスが選択しました。見えるようで見えない半透明感をぜひご覧ください。

宮田(株式会社総合車両製作所):
 やはり東『京』と日本の玄関口・『成』田を結ぶ京成線ですので、初めて来日される方はもちろん日々通勤通学で利用されている方にも快適にご利用いただける車両に仕上がっています。沿線にお住まいの方にも座席の座り心地や新設されたサービス機能をご堪能頂ければと思います。
 隠れ京成パンダも良いアクセントになっていますよね。飛んでいる姿は初めてのポーズじゃないですか?完成検査の際に、もう少し大きくしてもよかったという意見も挙がっていましたが、製造中も社内で話題になっていました。しかも3152編成の輸送中に京成パンダくんも添乗していましたよね?!

株式会社総合車両製作所 製作陣
日本車輛製造株式会社 製作陣