インタビュー記事

京成電鉄

グループシナジーの、ひとつの到達点。
お互いの良さを出し合って、
理想形が完成。

【京成電鉄】

鉄道本部 車両部 計画課 課員 渡辺 哲也

鉄道本部 車両部 計画課 課員 櫻井 聖

【新京成電鉄】

鉄道事業本部 車両電気部 車両課長 濱﨑 康宏
 ※座談会時、車両課長補佐

鉄道事業本部 車両電気部 車両課 技術員 小林 晃大

京成グループ標準車両の制作にあたって、度重なる議論を交わした
両社の担当者にご参加いただき、座談会を開催しました。

製作にあたってもっとも印象深かったこと。

小林:台車、車体やプラズマクラスターなど車内の機器を担当しましたが、やはり大枠が決まり、完成形に近づき、電車の「顔」となる前面デザインを決めたときがいちばん印象深いですね。

濱﨑:私は80000形の全体の取りまとめと車両走行に関する電気回路を担当しました。私も前面の形状には思い入れがありますね。今回は最初から双方が同じ形で、それぞれのカラーリングを施すことが決まっていましたから、どちらの色にも映える顔の決定はやはり難しく、何度も打合せを重ねましたね。

櫻井:私は機械ものと言われる台車やパンタグラフなど車体の設計を担当しました。新車両の設計を一から始めること自体が初めてで貴重な体験をさせてもらいました。メーカーも含めて、これだけの人数で電車が出来ていく、設計したものが次第に形になっていく醍醐味をいつも感じていました。

渡辺:私は京成車両の主に艤装、電気回路を担当しました。モニタ装置は新京成さんの8900形更新車を基に設計し、防犯カメラは京成AE形増備車の仕様を提案したりと、お互いのいいとこ取りをした車両であることがいちばんの特徴でしょうか。意外とお互いに知らないところもいろいろあって、「こんないいものありますよ」と案を出し合った結果、両社のいいところが一つにまとまった車両になりました。

濱﨑:チームワークはとても良かったですよね。今まで各社で培ってきた技術もあるので刺激になりました。京成さんの優れたメンテナンスのノウハウなど学ばせてもらいました。

渡辺:新京成さんからの提案で、バッテリーやパンタグラフ、モニターも決まりました。

グループ標準車両を作る上でいちばん大事にしたこと。

櫻井:電車はお客様をお運びするもの。大前提として安全第一の思いがいちばん強い。台車周りには細心の注意を払って、形状などを決めさせていただきました。

渡辺:いいものとは、快適性のあるものだと思うんです。そういう新しいものを採用して、長い年月、慣れ親しんでいただきたいという思い。それを皆で相談しながらやってこれたのが楽しかったですね。

濱﨑:私の担当する車両走行に関する電気回路では、省エネ性能と、乗務員の取扱いやすさを大事にしました。車両システム全体としてはライフサイクルコストを意識しました。また、将来の時代の変化に対応できるような車両を目指しました。

小林:40年から50年使う車両ですから、メンテナンスのしやすさを重視しました。また、何年かに一度あるかないかの新車ですから、お子さまをはじめ沿線の方にも「かっこいい!」と思ってもらえるようにしたかったですね。

逆に共同作業の苦労というものはあったか。

濱﨑:意外と意見がぶつかるということはなかったですね。

渡辺:そうですね。二社それぞれ事情が違うことも理解していたので。

濱﨑:むしろ相乗効果の方が大きかったですね。

小林:多いときは週3~4日、京成さんで打合せをしていたので、京成さんの社員みたいになってましたね。(笑)

櫻井:むしろ決定事項を双方の会社に持ち帰って調整することが大変でしたね。でもその積み重ねが安全につながっていくと思います。

それぞれの専門家として、提案したこと。

櫻井:現場にいた頃、「これ、こうだったらいいのにな」と思ったことを心の内に秘めていて、今回の車両にだいぶ反映させました。絶好のタイミングでしたし、自分にしかわからない箇所もあって、自分にとっても一生の思い出になりました。

濱﨑:私は「急行灯」のデザイン。デザイナーさんとの打ち合わせ時に、鉛筆で何度もスケッチを描いたりしました。実は当社線内では点灯することはないんですけどね(笑)。
あと、省エネと雨天時の制動力安定化の為に編成ブレーキ制御を提案しました。提案をしたものの、具体化するのは渡辺さんでしたので苦労されたかと思います(笑)。

渡辺:いえいえ、安全性やコスト、省エネ効果などの相乗効果が期待できる優れた提案でしたよ。私はタッチパネルのモニター。新京成さんの8900形がすごく良くできているので参考にしながら設計しました。

小林:ディスカッションの中で両者の「これがいいね」という提案がたくさんありましたね。

濱﨑:フリースペースで、乗客の方が寄りかかるための腰当ても議論しましたね。形状、床からの高さ、メンテナンスを考慮した構造とか。

小林:私は防犯カメラとプラズマクラスターですね。担当としてこだわったところはとても細かい部分なので、鉄道のマニアの方でも気づかないようなところが多いです。

渡辺:設計の時期には他社の既存車両や新型車両に乗ると、様々な箇所に注意が向きましたね。

小林:他社の車両に乗って写真撮って「これ良かったよ」って。私なんか、防犯カメラが担当ですから、電車に乗るたびよく観察していましたね。映像を確認される方は「ずっと防犯カメラを見てる人がいる」って気味が悪かったかもしれません(笑)。

濱﨑:でもそういった努力が、新型車両をより良いものにして、グループのブランドイメージのアップに貢献するのだと思います。

新車両が走り出すのが楽しみですね。

櫻井:二社の車両が並走して見えるのは、新鎌ヶ谷あたりですね。その雄姿を是非見て欲しいですね。

小林:両者の違いを探すのも楽しいかもしれませんね。それぞれの伝統や社風を尊重して、微妙に違うところが結構ありますから。

渡辺:今後ますます需要が高まるインバウンドに対しても万全の設備でおもてなししています。モニターも全部4ヶ国語でご案内していますし。

小林:車内に貼るステッカーもそうですね。

濱﨑:LED表示器も一新、海外のお客様にも分かりやすいように、コンテンツを見直して情報量を増やしています。

櫻井:まもなく実車がデビューしますが、長いような短いような不思議な感じです。

濱﨑:何年も前から勉強会を開いていた新型車両が、いよいよ現実のものになるのは感慨深いですね。